概要
16世紀の村の粉挽きが、世界は腐ったチーズから生まれたと語った。裁判の記録から、一人の頭の中を復元する。
この物語について
『チーズとうじ虫』(カルロ・ギンズブルグ、1976年、日本語版1984年)は、北イタリアの村の粉挽き、メノッキオ一人を追った本になる。
彼は語った。世界のはじめは混沌で、それは腐ったチーズのようなものだった。そこから蛆虫が湧くように天使が現れ、その一人が神になった。
異端審問がそれを記録に取った。尋問は何度も行われ、彼は自分の読んだ本を挙げ、村での議論を語り、譲らなかった。1599年、二度目の審問のあと火刑になる。
この本が新しかったのは、対象より方法になる。普通なら記録に残らない人間が、たまたま裁判にかけられたために、大量の言葉を残した。その言葉から、印刷された本と、村の口伝えの文化が、一人の頭の中でどう混ざったかを読む。微視の歴史(ミクロストリア)と呼ばれる方法の、最も知られた例になる。
この物語は、本が扱った時代の条件を並べたものになる。本文は写していない。
同じ年表に、王と戦争の項目が数百件ある。その隣に、名前しか残らなかったはずの粉挽きが一人いる。
動画(1)
重なっているストーリー
同じできごとや人物を含む物語です。何件を共有しているかを添えました。
宗教改革と科学革命4件を共有 / 教会が独占していた「何が正しいか」の答えが、聖書と観測に明け渡されるまで。技術と産業2件を共有 / 道具が人を変え、その人がまた道具を作った。速さが加速していく話。キリスト教のひろがり2件を共有 / 迫害される小集団が、300年で帝国の宗教になり、そこから何度も割れながら世界へ出ていった。誰が書き残したか2件を共有 / 残っているものが全部ではない。誰の筆によるかで、同じ出来事が違って見える。『サピエンス全史』で読む歴史2件を共有 / ハラリが人類史を三つの革命で切った本。その筋に沿って、このデータベースの項目を並べ直す。『想像の共同体』で読む歴史2件を共有 / 国民とは、会ったこともない人を同じ仲間だと思える想像力のことだ、という本。『イタリア・ルネサンスの文化』で読むルネサンス2件を共有 / 「ルネサンス」という時代の像そのものを作った本。150年たっても、まだその像の中にいる。表現の歴史1件を共有 / 書いた人、描いた人、作った人。政治と戦争のあいだに、ずっと別の営みがあった。コテンラジオで聞く歴史1件を共有 / ポッドキャスト「コテンラジオ」が取り上げた人物とできごと。ここに並ぶ項目には、その回の動画が付いている。確かめるという方法1件を共有 / 偉い人がそう言ったから、をやめた話。誰が最初かは、思っているほどはっきりしない。『銃・病原菌・鉄』で読む歴史1件を共有 / なぜ征服したのがスペイン人で、されたのがインカだったのか。ダイアモンドは答えを人ではなく大陸の形に求めた。『国家はなぜ衰退するのか』で読む歴史1件を共有 / 国境をひとつ挟んで豊かさが違うのは、地理でも文化でもなく制度のせいだ、という本。2024年のノーベル経済学賞の元になった。『繁栄』で読む歴史1件を共有 / 人類が豊かになったのは交換のおかげで、悲観する理由はいつも外れてきた、という本。反論側も付けてある。『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』で読む歴史1件を共有 / 資本主義を生んだのは強欲ではなく、救われているか分からない不安だった、という100年前の論文。『中世の秋』で読む中世の終わり1件を共有 / ルネサンスの前夜ではなく、中世そのものの終わり方。過剰な儀礼と、死への執着に覆われた14〜15世紀。筋(6)
年代順に並べてあります。役どころが書いてあるものは、なぜこの物語に含まれるかを添えました。
グーテンベルクの活版印刷できごと / AD1455年頃 / 村の粉挽きが本を読めた、という条件95か条の論題できごと / AD1517年10月31日 / 宗教改革が村まで届いたメノッキオ(ドメニコ・スカンデッラ)人物 / AD1532年 – AD1599年 / 粉挽きガリレオ・ガリレイ人物 / AD1564年2月15日 – AD1642年1月8日メノッキオの異端審問できごと / 1584年 / 全篇ガリレオの異端審問できごと / AD1633年 / 同じ制度が裁いた、別の裁判