概要
国境をひとつ挟んで豊かさが違うのは、地理でも文化でもなく制度のせいだ、という本。2024年のノーベル経済学賞の元になった。
この物語について
『国家はなぜ衰退するのか』(ダロン・アセモグル、ジェイムズ・A・ロビンソン、2012年、日本語版2013年)は、アメリカとメキシコの国境の町ノガレスから始まる。同じ土地、同じ気候、同じ祖先の人びとが、柵の両側で全く違う暮らしをしている。違いは制度にある、というのが本の答えになる。
制度は二種類に分けられる。多くの人が参加でき、財産が守られ、努力が報われる「包括的」な制度と、少数が多数から搾り取る「収奪的」な制度になる。収奪的な制度でも成長はできるが、長くは続かない。ソ連がそうだった、と本は言う。
どちらの制度になるかを分けるのは、小さな違いと決定的な岐路になる。黒死病はヨーロッパの東と西を分け、名誉革命はイギリスを産業革命へ向かわせ、オスマンと明と清が印刷や航海を止めたことは、その国を外に置いた。
この物語は、本が例に使ったできごとと国を、このデータベースの側から並べ直したものになる。本文は写していない。地理を重く見る『銃・病原菌・鉄』と、制度を重く見るこの本は、同じできごとを別の理由で説明している。両方を並べて読めるようにしてある。
動画(2)
重なっているストーリー
同じできごとや人物を含む物語です。何件を共有しているかを添えました。
『サピエンス全史』で読む歴史13件を共有 / ハラリが人類史を三つの革命で切った本。その筋に沿って、このデータベースの項目を並べ直す。主権はだれのものか10件を共有 / 王が決めるのか、議会が決めるのか、国民が決めるのか。800年かけて答えが動いた。交易路とお金9件を共有 / 運ぶ/両替する/貸す。人と物が動くところには、いつも同じ仕組みが生えてくる。帝国と独立6件を共有 / 数十年で世界の大半が数か国のものになり、また数十年で戻った。『銃・病原菌・鉄』で読む歴史6件を共有 / なぜ征服したのがスペイン人で、されたのがインカだったのか。ダイアモンドは答えを人ではなく大陸の形に求めた。『大分岐』で読む歴史6件を共有 / 1800年まで、長江下流とイングランドは同じくらい豊かだった。分かれたのは石炭と植民地のせいだ、という本。『世界史』(マクニール)で読む歴史6件を共有 / 文明どうしが接触し、借り、競い合うことで歴史が動く。世界を一つの物語として書いた最初の教科書。コテンラジオで聞く歴史5件を共有 / ポッドキャスト「コテンラジオ」が取り上げた人物とできごと。ここに並ぶ項目には、その回の動画が付いている。『繁栄』で読む歴史5件を共有 / 人類が豊かになったのは交換のおかげで、悲観する理由はいつも外れてきた、という本。反論側も付けてある。冷戦4件を共有 / 撃ち合わずに40年競った。ただし代理の戦場では、実際に人が死に続けた。技術と産業4件を共有 / 道具が人を変え、その人がまた道具を作った。速さが加速していく話。『暴力の人類史』で読む歴史4件を共有 / 人が人を殺す率は、狩猟採集の時代から今まで、長い目で見ればずっと下がってきた、という本。反論も多い。大航海時代3件を共有 / 海が壁ではなく道になった。二つの大陸が結ばれ、世界がひとつの市場になっていく。中国の王朝3件を共有 / 殷から清まで3000年。王朝は替わっても、同じ型で替わり続けた。都市の歴史3件を共有 / 人が密集して住むという異常な選択が、文明のほとんどを生んだ。朝鮮半島2件を共有 / 大陸と島国のあいだで、独自の文字と技術を育てた1300年。感染症と人類2件を共有 / 人が動くほど病も動いた。文明の広がりと感染の広がりは、同じ地図の上にある。探検と発見2件を共有 / 地平線の向こうに何があるかを、確かめに行った人たちの記録。東ローマ千年2件を共有 / ローマの西半分が消えたあと、東半分は1000年続いた。その中身をローマの続きとして並べる。宗教改革と科学革命1件を共有 / 教会が独占していた「何が正しいか」の答えが、聖書と観測に明け渡されるまで。ローマ人の物語1件を共有 / ラティウムの一都市が地中海全域を呑み込み、そして西半分が消えるまでの1200年。ポエニ戦争1件を共有 / 地中海の覇権をめぐる、ローマとカルタゴの120年。三度戦い、三度目でカルタゴは消えた。二つの大戦1件を共有 / 一発の銃声から31年。二つの戦争は別々ではなく、前者の終わらせ方が後者を呼んだ。イスラム世界1件を共有 / 一世紀でイベリアからインダスまで。学問を受け継ぎ、育て、そして西へ返した。女性の権利1件を共有 / 人口の半分が、参政権を得るまでに文明の歴史のほとんどを要した。草原の帝国1件を共有 / 匈奴からジュンガルまで、2500年のあいだ農耕世界の北にいた人たちの側から歴史を並べる。冷戦のあと1件を共有 / 対立の構図が消えたあと、何が残ったのか。1989年からの三十年。接触前のアメリカ1件を共有 / 旧大陸と行き来のないまま、農耕も都市も国家も別々に生まれた。3000年ぶんの、独立した実験。表現の歴史1件を共有 / 書いた人、描いた人、作った人。政治と戦争のあいだに、ずっと別の営みがあった。『ローマ人の物語』で読むローマ1件を共有 / 塩野七生が15年かけて15巻で書いた、建国から西の帝国の終わりまで。このデータベースの第一期と同じ範囲になる。『文明崩壊』で読む歴史1件を共有 / イースター島、マヤ、グリーンランドのノルウェー人。環境を使い尽くした社会と、そうしなかった社会。『疫病と世界史』で読む歴史1件を共有 / 歴史を動かしたのは王でも思想でもなく、目に見えない微生物だった、と最初に言い切った本。『ローマ帝国衰亡史』で読むローマ1件を共有 / ギボンが1776年に出しはじめた、トラヤヌスからコンスタンティノープル陥落までの1300年。「なぜ滅びたか」を問う型はここで作られた。筋(35)
年代順に並べてあります。役どころが書いてあるものは、なぜこの物語に含まれるかを添えました。
ローマ国 / 紀元前8世紀(伝承ではBC753年) – (続く) / 第6章。共和政から帝政へ移って収奪的になった、と本は見るヴェネツィア共和国国 / AD697年(最初のドージェの選出。伝承) – AD1797年(ナポレオンによる解体) / 第6章。開かれていた共和国が、門を閉じて衰えたマヤ低地の崩壊できごと / AD900年頃 / 第6章。収奪的な制度が内側から崩れた古い例マグナ・カルタできごと / AD1215年6月15日 / 第7章の前史オスマン帝国国 / AD1299年頃 – AD1922年(スルタン制の廃止) / 第8章。印刷を禁じた黒死病できごと / 1347年 / 第4章。同じ疫病が西では農奴制を緩め、東では強めた明国 / AD1368年 – AD1644年 / 第8章。航海を止めた鄭和人物 / AD1371年 – AD1433年頃ワット・タイラーの乱できごと / AD1381年6月 / 第4章。賃金を抑える法に農民が応えたコンゴ王国国 / AD1390年頃 – AD1665年(アンブイラの戦いで王が戦死し、以後分裂) / 第9章鄭和の南海遠征できごと / 1405年 / 第8章。航海を止めた国は外に置かれたグーテンベルクの活版印刷できごと / AD1455年頃 / 第8章。印刷を禁じた国と広げた国コンゴ王国とポルトガルの接触できごと / AD1483年 / 第9章。奴隷を売る王権は、民を守らないスペイン帝国国 / AD1492年(グラナダ陥落とコロンブスの航海) – AD1898年(米西戦争で最後の海外領土を失う) / 第1章。収奪の仕組みを作った側大西洋奴隷貿易できごと / 1526年 / 第9章ポトシ銀山の開発できごと / AD1545年 / 第1章。先住民を鉱山に徴用する仕組み(ミタ)が、収奪的な制度の原型大英帝国国 / AD1607年(ヴァージニアの入植) – AD1997年(香港の返還) / 第7章。名誉革命のあと清教徒革命と国王処刑できごと / 1642年 / 第7章名誉革命と権利章典できごと / 1688年 / 第7章。本の転換点。ここで政治が多元的になったイングランド銀行の設立できごと / AD1694年 / 第7章。王が勝手に借りられなくなった国のほうが、大きく借りられたジェームズ・ワット人物 / AD1736年 – AD1819年産業革命できごと / 1760年 / 第7章。制度が先で、技術は後ワットの蒸気機関できごと / AD1769年アメリカ独立宣言できごと / AD1776年7月4日 / 第10章アメリカ合衆国国 / AD1776年(独立宣言) – (続く) / 第1章と第10章フランス革命できごと / 1789年 / 第10章。包括的な制度がヨーロッパへ広がる起点ヨシフ・スターリン人物 / AD1878年12月18日 – AD1953年3月5日 / 第5章コンゴ自由国できごと / 1885年 / 第12章。悪循環ロシア革命できごと / AD1917年 / 第5章。収奪的な制度のもとでの成長は、続かないセレツェ・カーマ人物 / AD1921年7月1日 – AD1980年7月13日 / 本が例外として挙げる国の、初代大統領朝鮮戦争できごと / 1950年 / 第3章。同じ民族が38度線で分かれた、いちばん分かりやすい実験コンゴ動乱できごと / 1960年 / 第13章。独立しても仕組みは変わらなかったボツワナの独立できごと / AD1966年9月30日 / 第14章。悪循環を破った数少ない例ソビエト連邦の解体できごと / AD1991年12月26日 / 第5章の結末アパルトヘイトの終結できごと / AD1994年 / 第14章