概要
ピレネーの村人200人が、異端審問で一人ずつ尋問された。その調書から、村の暮らしが丸ごと出てくる。
この物語について
『モンタイユー』(エマニュエル・ル・ロワ・ラデュリ、1975年、日本語版1990年)は、一つの村の、7年分の裁判記録だけで書かれている。
パミエの司教ジャック・フルニエ(のちの教皇ベネディクトゥス12世)は、几帳面な人だった。カタリ派の残党を調べるために、村人を呼び、細かく尋問し、すべて書き取らせた。
異端の証拠を探すには、日常を知る必要がある。だから調書には、誰が誰の家に泊まったか、羊をどこへ追ったか、誰と寝たか、死者をどう弔ったか、魂は何だと思うか、が並んでいる。
著者はそれを、人類学者が村を調べるように読んだ。家(オスタル)という単位、羊飼いの季節移動、女性の立場、そして「死んだあとどうなるか」についての、教会の教えとは違う考え方。
この物語は、本が扱った時代を並べたものになる。本文は写していない。
弾圧の記録が、弾圧された側の暮らしを伝える唯一の史料になっている。物語「誰が書き残したか」と、同じ問題の裏側になる。
動画(1)
重なっているストーリー
同じできごとや人物を含む物語です。何件を共有しているかを添えました。
『中世の秋』で読む中世の終わり3件を共有 / ルネサンスの前夜ではなく、中世そのものの終わり方。過剰な儀礼と、死への執着に覆われた14〜15世紀。キリスト教のひろがり2件を共有 / 迫害される小集団が、300年で帝国の宗教になり、そこから何度も割れながら世界へ出ていった。宗教改革と科学革命1件を共有 / 教会が独占していた「何が正しいか」の答えが、聖書と観測に明け渡されるまで。感染症と人類1件を共有 / 人が動くほど病も動いた。文明の広がりと感染の広がりは、同じ地図の上にある。帝国と独立1件を共有 / 数十年で世界の大半が数か国のものになり、また数十年で戻った。誰が書き残したか1件を共有 / 残っているものが全部ではない。誰の筆によるかで、同じ出来事が違って見える。『国家はなぜ衰退するのか』で読む歴史1件を共有 / 国境をひとつ挟んで豊かさが違うのは、地理でも文化でもなく制度のせいだ、という本。2024年のノーベル経済学賞の元になった。『疫病と世界史』で読む歴史1件を共有 / 歴史を動かしたのは王でも思想でもなく、目に見えない微生物だった、と最初に言い切った本。『世界史』(マクニール)で読む歴史1件を共有 / 文明どうしが接触し、借り、競い合うことで歴史が動く。世界を一つの物語として書いた最初の教科書。『繁栄』で読む歴史1件を共有 / 人類が豊かになったのは交換のおかげで、悲観する理由はいつも外れてきた、という本。反論側も付けてある。『ヨーロッパ覇権以前』で読む13世紀1件を共有 / 1250年から1350年まで、世界はすでに一つにつながっていた。ただし中心はヨーロッパではなかった。『地中海』で読む歴史1件を共有 / 歴史には三つの速さがある。ほとんど動かない時間、ゆっくり動く時間、そして事件。捕虜収容所で書かれた本。『暴力と不平等の人類史』で読む格差1件を共有 / 格差を大きく縮めたのは、改革ではなく破局だった。戦争、革命、国家の崩壊、疫病の四つしかない、という本。『歴史序説』で読む王朝の寿命1件を共有 / 14世紀の北アフリカで、社会には法則があると考えた人がいた。王朝はなぜ三代で衰えるのか。筋(4)
年代順に並べてあります。役どころが書いてあるものは、なぜこの物語に含まれるかを添えました。
フランス王国国 / AD987年(ユーグ・カペーの即位) – AD1792年(王政の廃止)教皇のアヴィニョン捕囚できごと / 1309年 / 尋問した司教が、のちに教皇になるモンタイユーの異端審問できごと / 1318年 / 全篇黒死病できごと / 1347年 / この村の記録の、すぐあとに来るもの