概要
西洋が「東洋」について語ってきたことは、東洋についての知識ではなく、西洋についての物語だった、という本。
この物語について
『オリエンタリズム』(エドワード・W・サイード、1978年、日本語版1986年)は、学問と支配のつながりを問う。
本の言うオリエンタリズムとは、東洋への趣味のことではない。東洋を語り、分類し、代弁する、一つの制度化された話し方になる。その中では、東洋はいつも受け身で、官能的で、非合理で、専制的で、自分では自分を語れない。だから語ってやらねばならない、という理屈が、そのまま支配の理屈になる。
本が起点に置くのは、1798年のナポレオンのエジプト遠征になる。軍と一緒に学者が上陸し、測り、写し、『エジプト誌』を作った。知ることと取ることが同じ作業になった瞬間として書かれる。
この物語は、本が使ったできごとを並べ直したものになる。本文は写していない。
反論もある。ヨーロッパの東洋学を一色に塗りすぎている、純粋な学問的関心から研究した人も多い、という批判になる。ただし、この年表が誰の書いた史料に頼っているか、という物語「誰が書き残したか」と、この本は同じことを別の角度から言っている。
動画(1)
重なっているストーリー
同じできごとや人物を含む物語です。何件を共有しているかを添えました。
イスラム世界5件を共有 / 一世紀でイベリアからインダスまで。学問を受け継ぎ、育て、そして西へ返した。帝国と独立3件を共有 / 数十年で世界の大半が数か国のものになり、また数十年で戻った。誰が書き残したか2件を共有 / 残っているものが全部ではない。誰の筆によるかで、同じ出来事が違って見える。コテンラジオで聞く歴史2件を共有 / ポッドキャスト「コテンラジオ」が取り上げた人物とできごと。ここに並ぶ項目には、その回の動画が付いている。『サピエンス全史』で読む歴史2件を共有 / ハラリが人類史を三つの革命で切った本。その筋に沿って、このデータベースの項目を並べ直す。『近代世界システム』で読む歴史2件を共有 / 国ごとの発展を比べるのをやめる。16世紀からずっと、世界は一つの分業の仕組みとして動いてきた、という本。『交易の世界史』で読む物の流れ2件を共有 / シュメールの銅から現代のコンテナまで。人が物を遠くへ運ぶために、何をしてきたか。中国の王朝1件を共有 / 殷から清まで3000年。王朝は替わっても、同じ型で替わり続けた。探検と発見1件を共有 / 地平線の向こうに何があるかを、確かめに行った人たちの記録。技術と産業1件を共有 / 道具が人を変え、その人がまた道具を作った。速さが加速していく話。主権はだれのものか1件を共有 / 王が決めるのか、議会が決めるのか、国民が決めるのか。800年かけて答えが動いた。交易路とお金1件を共有 / 運ぶ/両替する/貸す。人と物が動くところには、いつも同じ仕組みが生えてくる。考えることの歴史1件を共有 / 同じ数百年のあいだに、ギリシアでも中国でもインドでも、人が根本から考え直した。キリスト教のひろがり1件を共有 / 迫害される小集団が、300年で帝国の宗教になり、そこから何度も割れながら世界へ出ていった。『国家はなぜ衰退するのか』で読む歴史1件を共有 / 国境をひとつ挟んで豊かさが違うのは、地理でも文化でもなく制度のせいだ、という本。2024年のノーベル経済学賞の元になった。『ローマ帝国衰亡史』で読むローマ1件を共有 / ギボンが1776年に出しはじめた、トラヤヌスからコンスタンティノープル陥落までの1300年。「なぜ滅びたか」を問う型はここで作られた。『大分岐』で読む歴史1件を共有 / 1800年まで、長江下流とイングランドは同じくらい豊かだった。分かれたのは石炭と植民地のせいだ、という本。『世界史』(マクニール)で読む歴史1件を共有 / 文明どうしが接触し、借り、競い合うことで歴史が動く。世界を一つの物語として書いた最初の教科書。『想像の共同体』で読む歴史1件を共有 / 国民とは、会ったこともない人を同じ仲間だと思える想像力のことだ、という本。『ヨーロッパ覇権以前』で読む13世紀1件を共有 / 1250年から1350年まで、世界はすでに一つにつながっていた。ただし中心はヨーロッパではなかった。『1491』『1493』で読む新大陸1件を共有 / コロンブス以前のアメリカは人の少ない原野ではなかった。以後の世界は、生き物の大移動でできている。『歴史の終わり』と『文明の衝突』で読む冷戦後1件を共有 / 冷戦が終わったあと、世界はどうなるのか。3年違いで出た二冊が、正反対の答えを出した。『アラブが見た十字軍』で読む十字軍1件を共有 / 同じ200年を、襲われた側の年代記だけで書き直した本。彼らはそれを「フランク人の襲来」と呼んだ。『リオリエント』で読む世界経済1件を共有 / 1800年まで、世界経済の中心はアジアだった。ヨーロッパは、その列に遅れて並んだ客にすぎない。筋(12)
年代順に並べてあります。役どころが書いてあるものは、なぜこの物語に含まれるかを添えました。
トゥール・ポワティエ間の戦いできごと / AD732年 / イスラームという「脅威」の記憶十字軍の呼びかけできごと / AD1095年イブン・バットゥータ人物 / AD1304年2月24日 – AD1369年頃 / 東洋の側にも、世界を記述した人はいたナポレオン・ボナパルト人物 / AD1769年8月15日 – AD1821年5月5日シャンポリオン人物 / AD1790年12月23日 – AD1832年3月4日ナポレオンのエジプト遠征できごと / 1798年 / 第1章。本が近代オリエンタリズムの起点に置くロゼッタ・ストーンの解読できごと / AD1822年9月 / 読めるようにすることと、所有することが重なるアヘン戦争できごと / 1840年インド大反乱できごと / 1857年 / 統治のために、相手を分類し記述するスエズ運河の開通できごと / AD1869年11月17日 / 東洋を通り抜ける道を、西洋が作って持つベルリン会議とアフリカ分割できごと / 1884年11月エドワード・サイード人物 / AD1935年11月1日 – AD2003年9月25日 / 著者