概要
狩猟採集から農耕へ、村から都市へ、そして国家へ。その一本道の筋書きそのものが間違いだ、という本。
この物語について
『万物の黎明』(デヴィッド・グレーバー、デヴィッド・ウェングロウ、2021年、日本語版2023年)は、この年表に入っている他の本の多くに、正面から反論する。
人類は小さな平等な群れで暮らし、農耕を覚えて定住し、余剰ができて不平等が生まれ、都市を作り、国家に行き着いた。この筋書きは、ルソーにもホッブズにも、そして『サピエンス全史』にも共通している。本はそれを、証拠ではなく物語だと言う。
氷河期の人びとは、季節によって王を立てたり立てなかったりした。ギョベクリ・テペを建てたのは農民ではない。ウクライナやインダスや、いくつかの初期の都市には、王宮も王墓も見つからない。アマゾンやカリフォルニアには、農耕を知ったうえで捨てた集団がいる。人は社会の形を選び、作り替え、そしてまた変えてきた。いつからそれをやめてしまったのか、というのが本の最後の問いになる。
もう一つの主張が、第2章にある。自由や平等という近代ヨーロッパの理念は、内側から生まれたのではなく、アメリカ先住民が宣教師や役人に投げつけた批判から来ている、という筋になる。
この物語は、本が例に使ったできごとを並べ直したものになる。本文は写していない。章題は日本語版で確かめていないので、番号と主題だけを書いた。
反論も強い。考古学の証拠の読み方が都合よすぎる、という批判が専門家から出ている。議論の側の動画も同じ物語に付けてある。
動画(3)
重なっているストーリー
同じできごとや人物を含む物語です。何件を共有しているかを添えました。
文明のはじまり10件を共有 / 農耕も都市も文字も、離れた場所で別々に始まった。そして始まった順序は、思っているのと違う。『サピエンス全史』で読む歴史9件を共有 / ハラリが人類史を三つの革命で切った本。その筋に沿って、このデータベースの項目を並べ直す。都市の歴史5件を共有 / 人が密集して住むという異常な選択が、文明のほとんどを生んだ。接触前のアメリカ4件を共有 / 旧大陸と行き来のないまま、農耕も都市も国家も別々に生まれた。3000年ぶんの、独立した実験。『世界史』(マクニール)で読む歴史4件を共有 / 文明どうしが接触し、借り、競い合うことで歴史が動く。世界を一つの物語として書いた最初の教科書。『反穀物の人類史』で読む歴史4件を共有 / 人が穀物を育てたのではなく、穀物と国家が人を囲い込んだ。最初の国家は、なぜ壁の内側に人を閉じ込めたのか。『銃・病原菌・鉄』で読む歴史3件を共有 / なぜ征服したのがスペイン人で、されたのがインカだったのか。ダイアモンドは答えを人ではなく大陸の形に求めた。『繁栄』で読む歴史3件を共有 / 人類が豊かになったのは交換のおかげで、悲観する理由はいつも外れてきた、という本。反論側も付けてある。『負債論』で読む歴史3件を共有 / お金は物々交換の不便から生まれた、という話は史料に無い。先にあったのは借りのほうだ、という本。『暴力と不平等の人類史』で読む格差3件を共有 / 格差を大きく縮めたのは、改革ではなく破局だった。戦争、革命、国家の崩壊、疫病の四つしかない、という本。古代オリエント2件を共有 / 文字も法も都市も、まずここで生まれた。そして次々に主が入れ替わる2500年。考えることの歴史2件を共有 / 同じ数百年のあいだに、ギリシアでも中国でもインドでも、人が根本から考え直した。『疫病と世界史』で読む歴史2件を共有 / 歴史を動かしたのは王でも思想でもなく、目に見えない微生物だった、と最初に言い切った本。『暴力の人類史』で読む歴史2件を共有 / 人が人を殺す率は、狩猟採集の時代から今まで、長い目で見ればずっと下がってきた、という本。反論も多い。『ホモ・デウス』で読む次の歴史2件を共有 / 飢餓と疫病と戦争を抑え込んだ人類が、次に何を目指すか。『サピエンス全史』の続編。『昨日までの世界』で読む伝統社会2件を共有 / 国家のない社会は、争いも子育ても老いも、私たちと違うやり方で扱ってきた。何を学べるか。中華の統一1件を共有 / 殷を倒した周から、初めて中国をひとつにした秦まで。800年かけて「天下」という考えが育つ。中国の王朝1件を共有 / 殷から清まで3000年。王朝は替わっても、同じ型で替わり続けた。技術と産業1件を共有 / 道具が人を変え、その人がまた道具を作った。速さが加速していく話。『物質文明・経済・資本主義』で読む三つの層1件を共有 / 毎日の暮らし、市場での取引、そしてその上に乗る資本主義。ブローデルは経済を三層に分けた。『交易の世界史』で読む物の流れ1件を共有 / シュメールの銅から現代のコンテナまで。人が物を遠くへ運ぶために、何をしてきたか。『史記』で読む中国1件を共有 / 2000年前に、一人の男が3000年ぶんを書いた。宮刑を受けてなお書き続け、以後の中国の歴史書の型になった。筋(16)
年代順に並べてあります。役どころが書いてあるものは、なぜこの物語に含まれるかを添えました。
認知革命できごと / 約7万年前〜3万年前 / 本が反論する相手。「認知革命で協力が始まった」という筋そのものを疑うライオンマン像できごと / 約4万年前ショーヴェ洞窟の壁画できごと / 約3万6000年前 / 氷河期の社会は、思われているより豊かで複雑だったギョベクリ・テペできごと / 紀元前95世紀 / 農耕を知らない人びとが巨石を立てた。順序が逆になる農耕の始まりできごと / 紀元前90世紀 / 農耕は一本道ではなく、始めては捨てられたチャタル・ヒュユクできごと / 紀元前71世紀 / 数千人が住んで、王の家が無いウルク。都市というものの始まりできごと / 紀元前35世紀 / 初期の都市に、王宮も王墓も見つからないインダス文明できごと / BC2600年 / 同じく、支配者の痕跡が無い都市ハンムラビ法典できごと / BC1754年頃 / 国家の三つの原理のうち、主権と官僚制の例ポバティ・ポイントの土塁できごと / BC17〜12世紀 / 狩猟採集民が100万立方メートルの土を動かした秦の中国統一できごと / BC221年テオティワカンの隆盛できごと / AD100年 / 途中で神殿をやめ、住民の集合住宅を建て直した都市カホキアの放棄できごと / AD1350年頃 / 国家が生まれ、そして人びとに捨てられたカンディアロンク人物 / AD1649年頃 – AD1701年8月2日 / 第2章の主役先住民による西洋批評できごと / AD17世紀末〜18世紀初め / 第2章。自由と平等の理念は、外から投げ込まれた批判から来たデヴィッド・グレーバー人物 / AD1961年2月12日 – AD2020年9月2日 / 著者。本の完成の3週間後に急死した